ガレージ探訪

夢を収める場所 ーアメ車と生きるガレージハウス

福島県/T邸

「クルマのために、家を建てたんです」。そう笑うオーナーのTさんが、このビルトインガレージの家を建てたのは13年前。きっかけはとてもシンプルでした。幼少期から筋金入りのクルマ好き。特に高校時代に心を奪われた“アメ車”への想いが、ずっと消えなかったのです。
アパート暮らしの頃、念願のアメリカ車を手に入れたものの、置き場がなく知人のガレージに預ける日々。「せっかく買ったのに、好きなときに乗れない。それが一番つらかった」。
そのもどかしさが、「だったら家を建てよう」という決断へとつながりました。


現在の愛車は、希少なラムエアー仕様のトランザムとブレイザー、そしてミニクーパーBSCCリミテッド。お気に入りのトランザムは生産台数が限られた本物の1台で、V8・OHVビッグブロックが刻む独特の鼓動、アクセルを踏み込んだ瞬間に押し出される分厚いトルクが乗る人を魅了して止まないとか。
「壊れやすいってよく言われるけど、ちゃんと手をかければ応えてくれる。クルマも人と同じですよ」。
オイル交換やグリスアップ、キャブレター調整まで自らこなすTさん。数年ごとに専門ショップでフルチェックを受けつつ、日常のケアは自分の手で行います。可愛がった分だけ、クルマはきちんと走る。旧車との付き合い方を、身をもって知っています。

ガレージ内部は、まさに“自分だけの世界”

赤を基調にまとめられた空間は、愛車のボディカラーと呼応するようにコーディネートされ、天井は澄み渡る青空をイメージした仕上げ。強制排気システムも備え、エンジンをかけた瞬間の排気音や匂いまで、この空間の一部として楽しめるように設計されています。
しかし本当の見どころは、そのディテールにあります。壁面や棚には、長年集めてきたお気に入りのアイテムが所狭しと並びます。たとえば、無骨な光を放つコールマンのランタン。ツーリングの相棒だったバイク用ヘルメット。映画やアニメのフィギュア、丹念に組み上げたプラモデル。さらに、スニーカーやワークブーツ、ヴィンテージのシャツやジージャンまで、まるで趣味のアーカイブのようにディスプレイされています。「小学生の頃に夢見た“おもちゃ部屋”の延長ですね」と、Kさんは少年のような笑顔を見せます。


そして、このガレージの中に据えられているのが長火鉢。炭を起こし、干物やするめをじっくりと炙りながら、日本酒をちびりとやる。クルマ仲間が集まれば、エンジン談義に花が咲き、笑い声が夜更けまで続きます。冷蔵庫にはビールや日本酒が常備され、いつでも“ガレージ飲み”が始められる準備は万端。ここは単なる駐車スペースではなく、好きなモノに囲まれ、好きな仲間と語らうための場所。クルマを中心に広がる、もうひとつのリビングなのです。

―アメ車の家族からの評価は?

「かっこいい。でも、うるさい(笑)」。
V8サウンドは迫力満点。その存在感もまた、アメ車の魅力なのです。

―ガレージハウスを建てたことで、何が変わりましたか?

「クルマとの距離がゼロになったことですね。好きなときに眺めて、触れて、走らせる。それが当たり前になった」。預けるしかなかった愛車が、今はすぐ隣にある。その安心感と満足感は、何にも代えがたいものだと言います。

―アメ車のいちばんの魅力は?

「理屈じゃないパワーと鼓動。あのドロドロしたV8の音と振動は、乗った人にしかわからない」。合理性だけでは語れない個性。多少の手間も含めて愛せるかどうか。それがアメ車の世界です。

夢は、まだガレージの中で進化する

「もう一台、いつか手に入れたいですね」。1970年式のオールズモビルにも心を惹かれているというTさん。けれど、その言葉のあとに少し間を置いて、こう続けます。「ただ、今の愛車を手放す気はありません」。
新しい憧れはあっても、長い時間をともに過ごしてきた一台一台への想いは別格。手をかけ、走らせ、語り合ってきた日々が、このクルマたちには刻まれています。
だからこそ“次”を夢見ながらも、“今”を大切にする。ガレージに収まる愛車を見つめるその眼差しが、何よりも雄弁に物語っていました。
また、将来ガレージの奥に小上がりスペースを作りたい構想もあるとか。空間も、クルマも、これからまだ進化していくT邸。
クルマのために建てた家。けれど実際は、人生そのものを楽しむための場所だったのかもしれません。
ここは単なる駐車場ではなく、少年の夢がそのまま形になった“秘密基地”なのです。

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